「ハウルの動く城」

ソフィーを中心にして見れば典型的「魔法少女もの」。マジカルエミ、クリィミーマミ。かつて「おやじマン」*1ていう漫画があったが、「ハウル」は実は「本物の大人ってのはやっぱ50過ぎないと」という加藤礼次郎の思惑さえもあっさり上回る、90歳に変身する驚異の魔法少女アニメなのである。が、なんでかそういう意見を見かけない。不思議なもんだ。

検証してみよう。まずソフィーは最初、内気で引っ込み思案なために損をしがちな娘として描かれる。あるとき、偶然にカッコいいハウルに助けてもらい一目惚れする。魔法使いのお婆さんに大人にしてもらう。「呪い」と「魔法のアイテムで変身」じゃ違うじゃないかと言うかもしれないが、何の脈絡もなく唐突に正義の味方になるよう強要され命の危険すらある戦いを強いられるプリキュアを筆頭に、半ば強引に使わさせられる魔法のアイテムなんざ「呪い」と大して変わりはない。
さて魔法の力で変身したソフィーは大人の魅力と大胆さでハウルに急接近する。このあたりはソフィー自身が「あたしったら大人になったら何だか大胆になったみたい」と言葉にして説明してくれるので読み違えることはないだろう。そしてライバル魔女と対決である。ライバル魔女は国王付きの魔法使い、由緒正しいエリートだ。メテオさんみたいなもんだな。星力で対決するし。その後はハウルとラブラブハッピーエンドである。注意すべきは髪の毛の色が元に戻らない点だろう。ここからも「魔女の呪い」が実は呪いではないことがわかる。つまりあのラストは、ソフィーが内面的に成長したことで魔法の力に頼って変身成長しなくてもよくなった、という状態の描写なのだ。