化物語 猿

これは相当つまらない。

そもそも元の話やキャラクターが今ひとつ、というのもある。声優に潤いが欠けてて聴く快楽がないのも大問題だ。しかし、とくに1話は全体にセンスが悪く、しかもアクションシーンが浮いてて、ちっともハマらない。絵で面白かったのは2話目の本の海で遊んでるとこぐらいだが、その本の海状態が怪異がどーこーという「話の本筋」部分とどう絡まってるのかというと、ちっとも絡まってるように見えず、シーン水増しで遊んでみたところがどうやら一番面白いという、なんぞ作品としての一貫性を組み立てる気が全くなさげな態度ばかりがことさらに鼻につく。原作を消化して自分たちの作品にするための労力を省いた結果が、こんなもんである。最初からまとめ上げる気のない代物で部分的に頑張ってるようなのは、職人芸とは言わない。芯柱も鬼瓦もない(2X4工法はもちろん採用してない)、ちょっと風が吹けば倒れ雨漏りする家屋の鴨居欄間の彫刻だけイイ仕事してますねてのは、言われたこと、得意分野しかやろうとしない「ゆとり世代の理屈」だ。手抜き仕事してんなあ、としか。

化物語なりを見て思うのは、たぶん、いわゆる「ヌルヌル動く」「板野サーカスな戦闘シーン」の原画&動画が頑張ってるところをヒエラルキーの最上位においてモノ作ってるんだろうなーという。おそらく価値観として静止画での演出は「予算がないから仕方なく」といった理屈付けのもと運用されてて、隙あらば動かしまくった動画を突っ込んだほうが無条件に良い、といった思想で作ってて。なので静止画は(たとえばDVDが売れるとなると)実にアッサリと動画に譲る。

結局のところ、文字やら実写コラージュやらを散りばめてる作りの背後に透けて見えるのが、「動画を動かしたくても動かせない理由があるんだよ」というニヒリズムで、静止画を何とか駆使して異なる価値観を作り出そう、といった創造への苦しみとかは、一切ない。それでも客は喜ぶのだろうし、「衰退する日本」という時代の空気として諦め顔で互いにため息をつきあうほうが喜ばれるのだろう。「ヌルヌル動く動画を作れる日本のアニメ業界ってスバラシイ」みたいな価値観だけは共有していられるし。

技術に価値を見出す粋人の領域だけで愛でてくれば、それは構わない。が、この手の技術者の職人芸を礼賛する人たちは、「どうせ判ってくれないから」という理屈で、他人を騙す。説明を省き、判る奴にだけ判ればいい、という強がりを、いつの間にか説明すべきことを説明しない詐欺まがいの沈黙の根拠にすえて、居直る。その手の欺瞞を、強く感じた。