アキバといえばメイド

 同人文化としての「凌辱」フォーマットの普及とその扱いは、二次創作の著作権を巡る議論とほぼ連動する。はっきりと追求してしまえば違法なのは間違いなく、また、作家や作品へのリスペクトの表明としても、その「手法としての二次創作」の、数にまかせた形で成立している状況、当り前に認められてるような錯覚をもたらすだけの量の積み上げを加味した場合、事実としての二次創作の実体はグレーゾーンの度合いが高い。

 もとはといえば罪のない、大した話でもない、素朴な話だ。大半はファン活動として二次創作を行い、その活動において「著作権侵害」を行い「凌辱」をフォーマットとして適用。けどまぁ、巨大な売上げを叩き出すサークルなんて数えるほどだし、大概は赤字覚悟の微笑ましいファン活動という程度で実害と呼べるほどの実害は今のとこない。そんだけ。

 ただ、それを今回のように正面から切り込んで「痴漢強姦中絶エロゲ」ユーザーの内訳を、濃いヒト薄いヒトなどなど幾つかに分類、というふうに分けてしまうと、厄介な話になる。なぜならこの「凌辱」フォーマットの使用は一定以上のスケールメリットを期待して採用された同人文化圏としての共通様式の一つであり、著作権への侵害の意識と同様、一応はヤヴァイという知識を持っててもとりあえず「フィクションの凌辱だから」と棚に上げとく振る舞いでもって自分たちが集団・群れとして行動するため使いやすい相互共通のコードを維持しようとする、つまり結果から言うと、理屈じゃなく本能的に群れの危機としてルワンダ発言に対し反発するからだ。

 アキバといえばメイド、オタクといえばメイド、という。一方で、アキバやコミケというオタク文化の中核の行動である、二次創作流通の様式や二次創作におけるダイレクトエロの率の高さは、当り前だが「フツーのヒト」にはあまり知られてない。そーゆー話題は誰もが避けて通るから(グレーゾーンを「表」に流すための手法として「ハヤテのごとく!トレーディングカードゲーム」みたいのが小学館公認で出る現在だけどね)。

 エロパロは批評として正統な手法であるという。だが、同じ趣向を持つ集団が、ときには数百数千の、同じ題材、同じ方向性の「エロパロ」を描き、それを相互に流通させる。それは「作品や社会への批評の手法」だろうか。