恋姫無双

 昔、「ONE2」というエロゲタイトルの製作発表で、原画を公募オーディションで決める、という企画があって。

>もしいたる絵以下の原画しか集まらなかったら?
>……そう考えた途端、誰もが安堵の息をついた。
>「あれ以下なんてあり得るはずがないさ! アヒャ!」
>これは激しく俺の偏見であることを追記しつつ、原画オーディションは静かに幕を閉じていった。
>そして採用された原画がコレ。
>日本中のヲタクたち発狂。
http://typerx.usamimi.info/bbb/8th_one2.htm

「コレ」を、ちょこっと探してみたのだが見つからなかった。いちおう確認しておくが、今をときめく恋姫無双原画家さんである。

 実際に製品化されたキャラクターデザインは、結局、随分と大人しいものになった。もちろん、その絵柄の変遷の延長線上に今の恋姫無双のヒットがある。それは否定も肯定もされるものではない。

 ただ、恋姫無双のアニメを見るとつい思ってしまうことがある。なぜあのとき、あのオーディション結果の発表時の衝撃を、ネクストンの製作者サイドはうまく生かすことができなかったのか。

 CGツールに適した描線、立ち絵に適したデザイン、そうした「プロのテクニック」を全く気にしない「素人」による原画応募から選び出されたあの絵から立ち上っていた何か、そこから発売までに消えてしまった何か。

 僕は「少女革命ウテナ」の第1話を見たとき「さいとうちほの絵柄の魅力をまるで伝えていない」と拒絶した程度に、漫画やアニメのメディアミックスについて原作厨保守派だ。数千枚のセルを描かなければならないアニメのキャラデザの制約は理解できるにしても、そこにわだかまりは残る。

 アニメなどではない、基本的に静止した挿絵を基調にした作品となるだろう、絵物語の企画である「ONE2」なら、もっと、あのインパクトを生かした形での画面作りの方法があったのではないか。なぜそれが出来なかったのか。たかだか既成のゲームエンジンの縛りのためにそれが不可能だったのだとしたら、今なら、そんな脳内の束縛を振り切ってしまいさえすれば、あの日の幻を追いかけられるのではないか。