ダークナイト

 見てる分には文句ないけど、例によって世間の褒め方がなんかなーという感じ。基本的にはビギンズとそんな変わってないと思います。別に前作を貶さなくても普通に見れる。

 ビギンズ貶してダークナイトを褒めるのは、ビギンズがまぁ日本映画と同程度にペースがのんびりしてて絵面として迫力にやや欠けてたのが改善されたので(アクション映画としちゃ人物造型よりかは台詞のキレや絵面が全てなんでまるで違うと言っていいけど)「アメコミの実写化」よりか一般性を獲得した、というふうに翻訳して読めばいいんじゃないかな。

 頭のオカシイレベルどうこうで言うなら、日本の特撮ヒーロー物のひとたちもそれなりにヤバイ連中が大勢いるので、それに比べて格段に凄い深い素晴らしいとはならないと思うけど。今回のジョーカーみたいのは確かに抜け落ちてるかも。相当にバランスがよくて説得力がある。ガキっぽくはないし、テロリストとか記号とか象徴とかアメコミの登場人物とかじゃなく、どこを切り取っても当り前の意味できちんと人間らしく見える。そのへんが超えがたい差かなぁ。ちゃんと映画を通してこその人間として成り立ってる、ていう。演技が凄いと書けばそれで終わる話なんですけども。

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 ネタバレとして。

 嘘のつき方の上手さは、ジョーカーが組織力あって手下を大勢巧妙に使うとこに尽きる(それに対する自己言及もシナリオでの解説もある)んじゃないかな。ジョーカーひとりじゃ単に若気のいたりでパンクロックに酔って道端で暴れてるチンピラと大差ないのだけども、映画だと絵優先で実務的な困難を飛び越えて大きいことをやらかしてしまえるので、チンピラの論理が社会全体の秩序を引っくり返してしまう。そういう「もう映像として起きちゃったから」的な嘘のつき方に対して「映像メディア」な映画なんかだと有効に反論できないてのが多分にこの手の話の核心と思うのだけど、そーゆー視点から見てしまうとダークナイトは結構危うい。その危うさを隠してくれてるのがキャラクターの特異な個性が話を大きく支えてくれる「ヒーロー物」ジャンルだ、というとこまで含めての限定された「リアリズム」を楽しもうというのは、ヒーロー物として見に行くファンじゃないと共有できないし、しちゃいけないと思う。

 当り前の話だけど、ちょっと「タイトルからバットマンが外れた」ていう物言いが気になったので。