紬いろと「拝啓見知らぬ旦那様、離婚していただきます」フロースコミック

婚約破棄の逆張りで、女性側から離婚を申し出るパターン。

このへんのジャンルは基本的には「男性から自立して女性自身でバリバリ仕事をこなす自立性を味わいたい」という欲望と「イケメンにチヤホヤされまくって依存しまくって溺れたい」という欲望の二種類を満たすように作られてる。大雑把には自立性を強調すると悪役令嬢で、依存して溺れたい方が前に出ると聖女という二つの基礎があり、その基礎の上に、自立を強調するけど結果的に周囲が勝手に惚れてチヤホヤしたがる悪役令嬢、本来ならチヤホヤされまくるんだけど色んなトラブルがあって困難を乗り越えてかないとチヤホヤに浸れない聖女、という大枠が形作られ、そこから何をやりたいかで派生してく。

一方、なろうジャンルはエロ派生も多く定番を活用してメインはエロ描写というのも当然多い。で、エロを入れるとしばしば話の展開が凄い感じにねじれる。愛を確認しあったらハッピーエンドで話が終わっちゃうので、話を続ける都合で愛情の確認をギリギリまで後回しにするためにレイプしたりは典型例だが、本作も捩れっぷりがすごい。

主人公は自立して仕事したいので夫が戦地に行ったきりの家に嫁に来たが、8年ぶりに夫が帰ってこれるようになった途端に面倒だと言って離婚を申し出る(8年間、領地管理もそこそこに、ブティック経営とかやってる)のだが、そこに夫が戻ってきてふざけんじゃねえとレイプし、さらに「これから1ヶ月間セックスして子供出来なかったら離婚を認める」という、なんかよくわかんな条件を出してきて、セックスしまくる(2回目からは優しく扱ってくれるようになる)。

セックスしまくりつつ、夫が戻ってきちゃったのでしょうがないと領地管理の仕事に戻ったら不正を発見し、あたしって仕事できるから会計不正も見抜けるのよ、と、いや管理ってのは継続的に見続けて管理し続けるか、手放しても管理が行き届く仕組みを作るのが本来であって、ちょっと目を離したら不正が横行してましたとか有能でもなんでもねーよとツッコミを入れずにはいられないことをサラッと良いことしたみたいに描写。

書いてて笑っちゃうのだが、欲望だだ漏れにもほどがあるというか、現実で上記のような仕事っぷりでなおかつ旦那に対する横柄な態度はクズと呼んでいいレベルなわけだけど、それでも夫はセックスでチヤホヤしまくってくれる。悪役令嬢も聖女も欲望だだ漏れジャンルではあるけど、多少の建前は用意されてることが大半だが、ストレートにやりたいことされたいことしかない。

本作は仕事できるウーマン部分をファンタジー要素にせず(普通は凄い治癒魔法が使えるとかのファンタジー能力で仕事描写を誤魔化す)中高生の将来の夢並みのお仕事のイメージ図にしてしまい、チヤホヤ部分をセックス漬けにしてしまったため、うわー、うわー……うわ……いやこれは酷い(ドン引き)になってしまったという。

顔はいいです。顔がよければいいのか。