佐々木果『まんが史の基礎問題 ホガース、テプフェールから手塚治虫へ』

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著者の、ここ数年にわたる研究のまとめ的および再検証的な内容です。19世紀欧州において「まんが」が離陸する流れを紹介してくれています。個人的に、様々なところで共振するところが多い著者の問題提起が非常に刺激になりました。後半、日本の漫画史においては先行研究の少なさ等々から、やや尻すぼみな気配があります。(手塚治虫の名前を題に使いつつも手塚治虫までの道のりをハッキリ示しているとまでは言えません)そのへんは、これからの諸研究者の課題になるのかなと。ですが19世紀にこんだけ下敷きが出来てたという話だけでも読み応えは十分です。引用されてる「まんが」も多いし。

大まかにまとめると、まんがの形式が成立するにあたっての「ストーリー」との関係は、一方でベンヤミンの映画評論における「ショック」「外傷」、つまり「ストーリー」でないあり方と不即不離でありつつ、しかし「ストーリー」を書こうとする強い目的意思によって、明確に意識的に作り上げられていった、また、その狭間において発明され、まんがや、まんがに近しいジャンル(アニメも映画も)で重要な役割を果たしていくことになるのが「線」であり「キャラクター」である、といった粗筋になるかと思われます。

とりあえず、何十年か前によく言われましたような、コマはそのまま映画のスクリーンみたいなもんである、ぐらいの認識で語られる「まんが論」「まんが語り」からは非常に遠いというか、もう完全に別物の領域に至っています。同人誌ですが、何かの機会で再度売られることがあったら是非に入手を。

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