「ギャルゲーの境界線はどこにある?」へのレス

id:Ougino:20050707より。
牧場物語」の話は「ときめきメモリアル」の製作者インタビューを思い出しました。嘘か本当か知らないけど企画〜初期開発段階は単に学校生活シミュレーションとして作ってて、女の子とデートしたり告白されたりするのは後付けだった、ていう話。
私から見ますと、牧場物語の公式ページの紹介を読む限りは恋愛ゲームにしか見えないっス。
http://www.bokumono.com/series/index.html
んで、

だからid:tdaidoujiさんの定義によればこれは恋愛するゲーム①の分類になるのですがあくまで選択肢が「何もしない」というのが与えられているのは凄いことです。

恋愛がらみのイベントがゲームの勝利条件がらみで必須かどうか、という話ですよね。確かに、そこがひとつの分水嶺になってたと思います。
また「これはギャルゲーじゃないのか」と思わせるもう一方に、シナリオの本筋やオフィシャルの勝利条件には一切関係しないのにヒロインとのデートイベントがシナリオ進行上必須なものとして用意されている「FF7」があります。
 
なお、エロゲープレイヤーの視点から比較的綺麗に整理されてると思われるのが以下の記事で、前回の文章の元ネタのひとつです。
「同級生」から「To Heart」までにおける恋愛ゲームの変遷

ときめきメモリアル」と「同級生」はそのシステムの根本から全く違うゲームであると言える。共通しているのは恋愛過程を重視し全面に押し出したという方法論のみである事には注意されたい。両者の違いはこうも言い換える事ができる、「同級生」は自分で女の子をオトすゲームであり「ときめきメモリアル」は女の子に告白してもらうために自分を磨くゲームであると。この能動性から受動性への転換が恋愛ゲームの一つの転換点であろう。やはり、絵が凡庸だろうとなんであろうと「ときめきメモリアル」はエポックメイキングなゲームである事にはなんら変わるところは無いのである。

そして多分、エロゲープレイヤー側の視点からは取り上げにくいのが「牧場物語」的なものと「ときめきメモリアル」との差異、もしくは同質性についての問題です。「ときめきメモリアル」もまた、ヒロインと必ずデートしなければならないわけではなく、ただ卒業式後の告白獲得がオフィシャルの勝利条件として採用されている。恋愛に関して、前者が「何もしなくてもいいし、作り手が用意した勝利条件には関係しない」、後者が「何もしなくてもいいけど、作り手が用意した勝利条件に届かない」。大きな差異に見えるかもしれませんが、例えばウィザードリィワードナを倒すという「最終目標」を通過点に過ぎないと見なす「RPGの長いEDはウザイ」派からすれば、作り手が用意したエンディングをゲームの本質的な差異の中に含めないのは至極当り前な態度です。
エロゲー、裸を見るゲームを軸に考えた場合、見落とされがち*1なのが「裸を見る」という非常に強力な「正解」が作り手と受け手の両方に共有されることで、これは上記のような「RPGの長いEDはウザイ」派、ゲームシステム、ゲーム性重視派と相容れません。その点について、「ビデオゲームにおけるメディア特性――物語性と主人公に着目して」でも指摘されていますし、またエロゲ評論の流れでは更科修一郎が延々と指摘しつづけていて、「ギャルゲーにおける人形表現――自己去勢するオタクたち」(『ユリイカ』2005年5月号)でもそのへんの限界について、読みやすくて比較的自殺したくならない文章で丁寧に解説されていますが、つまり上で引用した『「同級生」から「To Heart」までにおける恋愛ゲーム』という流れでは、裸を見る、エッチするという基盤によって、恋愛という関係性の実在が保証され、さらにストーリー伝達の確実性の向上が成立してきたわけです。例えばストーリーが枝分かれし情報に矛盾が生じた際に、「エッチできた分岐が、より正しい情報」という価値基準が保証となって、矛盾のないストーリーの伝達が行われてきました。
分岐ノベルという形式にしても、「弟切草」の段階ではグッドエンドもバッドエンドも存在しなかったものが、エロという価値基準を得たことで一気に小説として読みやすくなりました。*2それは逆にいえば、エロの範疇を超えた価値観をストーリーに導入しようとすると作り手の独り善がりになってしまうという限界でもあります。
話戻りまして、ギャルゲーの境界線を定める別の基準として、声優の存在をあげる人もいます。
エロゲータイトルをエロのないコンシューマーに移植する際にヒロインの台詞に声を付けて販売することが示すように、声をエロに代わる実在の保証として用意されていると考えるわけですが、その価値観では声優が喋るか否かがギャルゲーと通常のゲームの分水嶺となる、という指摘は夏葉薫さんが得意としてきたところなのですが、そのへんの過去ログみつからないのでパス。
該当ページを教えていただきました。

エロゲーとギャルゲーは違う。エロゲーは未来に用意されたエロシーンで
プレイヤーを引っ張り、ギャルゲーは声でプレイヤーを推し進める。
http://kaolu4seasons.hp.infoseek.co.jp/diary012002/nikki.html

とりあえず、そんなところで。

*1:だから先日の文章でも抜け落ちてる

*2:「ピンクのしおり」が出るまで繰り返しプレイすることを考えると、「弟切草」もまた「エロという正解」なくして成立しなかったと言えるかもしれない。言い過ぎか。