「オーガストウォーズ」

ロシア発ロボット戦争映画、という触れ込みで上映されてるナンカ。
見れば一目瞭然だけど言葉で説明するとなると難しい。基本的にはソ連映画の伝統を引き継いだロシアらしいロシア映画で、そこにアメリカ映画の現代的な諸々を乗っけたもの、です。
まず題材について。
つい数年前に実際に起きた南オセチアグルジア・ロシア間)軍事紛争を、紛争を実際に戦ったロシア軍の協力を得て、ロシア発の映画として作ってること。言わずもがなプロパガンダ映画というか海外向け自国の正しさを主張した内容です。
つうかクレムリンでの会議シーンがやたら多い。延々と続く戦闘シーンを区切って現状を判りやすく説明するタイムスケジュール的な感じでクレムリン会議が挿入されます。メドベージェフ役者やプーチン役者が出てきて「ロシア軍が介入すれば海外から批判されるぞ」「我々には民衆を守る義務がある!」とかそーゆー感じで非常に判りやすく「グルジアが悪い。ロシアは悪くない」と説明してくれる。現役政治家のリアルタイムなプロパガンダ映像作品を見るのって初めてなので驚くと同時にお得な体験したなあ、とか思ってしまいました。
つぎに映画の見どころ、というか何を中心に撮られてるか。
圧倒的に戦闘シーンでした。ロボじゃないだろうとは思ってましたが、母と子の感動ストーリーでもプロパガンダでもなく、ハリウッド映画に負けないリアルな戦争映画を作るぜ、という感じで戦闘シーンが見せ所でした。流石に戦車の実機が爆発炎上したりはしませんが、部隊の展開とか装甲車使った機動とか、そゆのがゴリゴリと。
つぎ。主役であるはずの、母と子のシナリオ。
すごくとってつけたような、言い訳くさい感じがしました。無視しましょう。
ロボ。
どうでもいいです。トランスフォーマーモドキ。
全体の感想。
プーチン役者が出てきた、というサプライズが強すぎて他は全部吹っ飛んだ。
 
さておき。
 
まさか、メドベージェフ役者やプーチン役者なんてものを、まがりなりにもロボット物のように宣伝してる映画で見るはめになったものですから、まあ色々考えたり。
いつもの話ですが、フィクションと現実の境目を、どのあたりに置くのか、といった。
たとえば、これがプーチンが現役の一線から退いた後に見たのだったら、どういう感想を抱いただろう、とか。
プーチンとかグルジアとかの「実名」「実際にあったこと」じゃなく、「プッチン」「ゴルジア」みたいな、ちょっとだけ名前を変えたけど、すぐ実際の事件や名前を類推できるようなものだったら、どうか、とか。

これ、けっこう悩むのですね。たとえばさ、宮崎駿が実在の人物を実名で使って、にもかかわらず自分の好き勝手に人物造型を捏造してて、実際には酒も煙草もやらない人間だったのに煙草を吸いまくってるとか、文句言われたりするけど、じゃあ、豊臣秀吉なんかは実際の人物像と関係ないキャラで描かれるのが当たり前になってるけど、そっちと比較してオッケーとするのか、とかさ。

もちろん、いくらフィクションといったって、現実の一部であることに違いはないですから、無条件に、好き勝手にやっていいわけではない。
というよりも、自力でなんとか現実から脱出しようと四苦八苦、試行錯誤した果てにフィクションが成立するのであって、「フィクションだから何をやってもいい」んじゃなくて「フィクションという場を成立させようという不断の下支えを、それぞれの人がそれぞれの立場から続けていかないといけない」って話が、先にあるはずなんだけどさ。