メイド刑事的メンタリティについて

この場合、「超少女明日香」の明日香が普段は「お手伝いさん」として働いていることに注意すべきでしょう。明日香は、例えば花とゆめコミックス1巻の芙蓉夫人との対決において、夫人の闇業界方面の幹部「四重奏」のそれぞれの家にお手伝いさんとして潜入し、4人の協力関係を破綻させるように仕向けるなどします。*1
メイド刑事の捜査手法が明日香のそれを継承していることはまず確実です。他にもメイド刑事の3話、メイドとして入った家の荒んだ家族関係をメイドなりの手段で改善すべく動くなど、明日香のそれを髣髴とさせる行動が目立ちます。*2
さて問題は、「それならメイドではなくお手伝いさんでいいじゃないか」となってしまう点です。そうした問題を解決するために、現代日本にメイドという職種があるようにいくつかの設定が設けられているのですが、どうやらそれだけでは問題は解決しなかった。お手伝いさん、家政婦という概念との差別化の問題がメイド刑事の思考を規定しているのではないでしょうか。そしてその現実から乖離した概念が時代劇と結びついたときに、ある種の化学変化を起こした。
 

「雪は、透矢さん専属のメイドなんです。だから、透矢さんは、私のご主人様ですよ」
「ちょっと待ってくれないか。メイドって召使いみたいなものだよね?」
「ええ、そうですね」
雪さんは悪びれた様子もなく、そう答えた。
「あの…あんまり自信ないんだけど、メイドなんていうのは今どき…それとも、家政婦さんだと思えばいいのかな?」
「いいえ。雪は家政婦ではありません。メイドです」
「そ、そう。それって何か違うの?」
「家政婦の方というのは、主に家事を職業としている方のことです。そこには契約がありますし、契約以上のことをする必要はありません。契約は賃金という保証によってなされ、家政婦の方はその賃金を得るために契約し、働くわけです」
「む、難しいね」
「つまり、家政婦さんのしていることは、労働なんですよ。家事という業務をこなして賃金を得る、お仕事です」
メイドさんは、違うの?」
「雪は、透矢さんによろこんでいただきたいだけなんです。労働というよりもご奉仕になりますね」
雪さんは、なぜか誇らしげだった。
他の同業者の意見はどうなのか知らないけど、彼女の中で、メイドっていうのは、そういうものらしい。
「おわかりいただけましたか?」

 
以上は、あの萌え属性分類の権威、新城カズマライトノベル「超」入門』において属性「メイド」の代表として認定された現代メイド界をリードするメイド、「水月」の琴乃宮雪さんによる自己申告です。こうしてみると、メイド刑事におけるメイド観とそれほど距離がないことがわかります。つまり、わが国におけるメイドは既にしてこういうメイドなのですわはー

*1:明日香は5人に分身できるので、4人の家に同時に潜入できるのです。

*2:もっとも、女の子が大きな家にお手伝いさんとして入り、そこで家庭内不和を解決するというのは少女マンガの典型的なパターンです。当然そこでカッコよくて金持ちな男の子と出会うわけですね。最近だと『フルーツバスケット』などがまさにそのような話で、さすが少女マンガの好サンプルといったところです。